「私で反応しろよ、と思った。」

父が倒れて、意識がない状態だったときのこと。

何を話しかけても、ほとんど反応はなかった。

「佳音が来たよ」

と言っても、反応はない。

ところが、

「相棒(愛犬)がおうちで待ってるよ」

と声をかけたとき、父の指がピクッと動いた。

……私で反応しろよ、と思った笑。

もちろん、その指の動きが何を意味していたのか、本当のところはわからない。
でも私は、そのときのことを今でも覚えている。

健康でいようと言われても、それだけではあまりピンとこない人もいる。

でも、
「あそこへもう一度行きたい」
「この人に会いたい」
「相棒にもう一度触りたい」
「あの番組が観たい」

そんなものが一つあったら、少し違うのかもしれない。

健康でいる理由なんて、立派じゃなくていい。

それくらいの「もう一回」が、一つあればいい。

父・銀杏のことを書いていたら、今日は母・小豆さんの話も一つ増えた。

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小豆さん物語 第5話|麻婆茄子と、忘れられたパン。